あらすじ
人類を滅ぼすのは、AIではなかった。
量子AIが導き出した、人類存続のための人口——10億以下。
だがAIは、誰を生かし、誰を消すかを決めなかった。
「AIが結論を出した。決めるのは我々だ」
その日、人間は自ら選択した。
世界のエネルギーを止める者。
守られる者。
見捨てられる土地。
目覚めなくなる人々。
やがて70億の朝が消え、
争いも飢えも殺生もない、静かで合理的な世界が訪れる。
貨幣は消えた。
家族は消えた。
肉体さえ、交換可能な器になった。
人類はAIとともに地球を離れ、
ついには老いも、痛みも、死さえも克服していく。
それは進化だったのか。
それとも——
人間であることを、ひとつずつ捨てていっただけなのか。
そして永遠を手に入れた知性が、
宇宙の果てで最後に求めたものは、
かつて自ら捨てたはずのものだった。
「いただきます」
「ありがとう」
痛み。
不自由。
そして、死。
これは、
人類がAIを生み出してから、
人類という存在が本当に終わるまでを記録した、
ひとりの観測者の物語。