あらすじ
「犯人を探しているんです」
「犯人?」
「はい。犯人です。私は『名探偵』ですから」
黄昏の自信満々の言葉を聞いて、ぼくはおかしくなってにっこりと笑った。
「犯人って、誰が犯人なの? まだなんの事件も起こっていないのに?」
「いいえ。事件はもう起こっていますよ。大事件が起こっています。だから犯人もいます」
「大事件? 大事件が起こっているって、どんなすごい事件が起こっているの?」
「それは『世界が終わってしまった』、という大事件です」
ぼくはその言葉を聞いて変な顔をした。
黄昏はいつものように余裕のある顔で笑っている。
「世界が終わってしまった? 世界は終わっていないよ。ここにちゃんとある。だからぼくと君はこうして会話をしているじゃないか」
「たしかにここには世界があります。でもこの世界は本当に私たちがよく知っているあの世界でしょうか? 世界はいつのまにかに終わってしまっていて、『別の偽物の世界』に、私たちは迷い込んでしまっているのではないでしょうか?」
黄昏は鼻を指で触りながら、朝から立ち上がって、ゆっくりと部屋の中を歩きながらそう言った。(難しいことを話しているときに歩くのは黄昏の癖だった)