あらすじ
「賄賂は受け取らない。脱税分は、全額納めていただく」
王都徴税局に勤めて二十三年。三十八歳の下級徴税吏グレン・アッシャーは、国一番の大貴族ガルデン伯爵の脱税を見逃さなかった。
その結果、届いたのは解雇通知と、名ばかりの準男爵位。そして魔境の縁にある、住民三人の廃村ロウグ。
おまけに滞納税、金貨三百枚。一年以内に納められなければ、領主ごと奴隷落ちだ。
だが、村に足を踏み入れた瞬間、二十三年間「帳簿の計算しかできない」と笑われてきたスキル《徴税》が目を覚ます。
【領主権限を確認しました。《十分の一税》を施行します】
領内で生まれたものは、すべて一割が領主に納められる。
狩人が兎を仕留めれば、その経験値の一割が。畑が実れば、その収穫の一割が。
そして、領地に踏み込んだ侵入者が剣を振るえば、その力の一割――いや、税率を上げれば五割でも七割でも、きっちり徴収される。
攻め込んできた伯爵の騎士団は、剣を振るたびに弱くなる。
密輸を企てたエルフは、魔法を撃つたびに魔力を納める。
魔境の主の竜は、ただ暮らしているだけで毎日とんでもない額を納税していく。
集めた税は、領民への還付と、俺自身の強化に使う。
村が豊かになるほど、俺は強くなる。俺が強くなるほど、領地は広がる。
これは、嫌われ者の徴税人が、廃村ひとつから国の財布を握るまでの物語。
なお、俺をクビにした伯爵の滞納分も、いずれ全部取り立てる予定です。