あらすじ
「お前はもういらない。」
かつて、何の具体的説明もなく、「才能がない、伸び代もない。」と一方的に判断され、チームの監督からも、そして高校駅伝界から排除(スポイル)されたランナーがいた。
しかし、この時は、当事者も含め誰しもが予測できなかっただろう。この非情とも言うべき、落ちこぼれの烙印を押された彼が、後に、箱根駅伝に新たな伝説を打ち立てる大きなきっかけを作ることになることを…。
「アイツら、クッソ遅ェよ!まるで赤色の信号機が突っ立ってるみてェだったな!」
かつて、赤色ばかりが目立つそのユニフォームから、いつしか他校のランナー達に、『シグナルレッド』と揶揄(バカに)され、常に見下されていた大学駅伝部があった。
しかし、その時は誰もが信じていなかっただろう。このチームは後に、箱根駅伝史上に燦々と輝く『伝説と栄光のシグナルレッド』と呼ばれることになるとは…。
箱根駅伝にはそんな我々(せけん)の想像や予想を超えるような『まさか』と云うものがあたかも偶然のごとく、そして必然として起こりうる。
これは、すべて選手にとって必ずしもベストな状況(コンディション)とは言い難い、真冬の正月に行われるが故、どのチームにも不慮のアクシデントが発生しやすい競技であるから…と言ってしまえばそうかもしれない。
たしかに、当日の寒暖差の激しい気温や選手を襲い来る凍えるほどの向かい風、長距離競技としては明らかに異質であり、その走者は翌日以降しばらくは歩行すら支障がでると云う特殊区間の山など、まさに過酷とも言える外的要因をあげればキリがないほどだ。
ただ、一つ忘れててはならないことがある。
それは、その『まさか』を起こすのは、いつだって誰よりもアツい情熱と最後まで諦めることを知らない魂を持ち合わせた若者たちであると言うことだ。
しかしながら、何事も効率化や合理化が最重要視される現代社会において、「現実はそんなに甘くない。無難に生きろ。諦めることも肝要だ」と云う思考に重きを置いてしまった大人たちは、気付かぬうちにそんな若者たちの可能性という命(めい)を奪ってはいないだろうか?
「強豪校(まわり)を見渡せば、
決して超えることなど不可能だと絶望するほどの『才能』、『実力』、『努力』、『環境』、『運』…これらに全てに恵まれた選手ばかりだろ?
だから、そんな奴がごろごろいるチームにボロ負けしたって、そりゃしょうがない。他にも道はあるだろうし、別の分野で勝負すればいいじゃないか…。」
確かに、この大人の言葉はまったくもって的を射た事実であるし、限りなく利口な考えである、と言っても過言ではない…。
だが、ここで断言しよう!
箱根駅伝に本気で挑もうとする若者の前では、その挑戦を忘れた老害共(オトナたち)の言葉など、『真実』と言う名の傘を借りた『まやかし』…つまりはただの言い訳であり、愚言・虚言の類いに他ならぬ、と!
くどいようだが、この物語の主役である若者たち、そして彼らのチームは…、かつて『シグナルレッド』(=『走れない赤信号』)と大いにバカにされた。しかし、この落ちこぼれと揶揄された大学駅伝部のメンバー達は、今もなお、決してあらゆる困難にも挫けることなく、何度でも立ち上がり、ただただ前だけを見て走り続けている。
その『情熱』と『魂』は、今も襷(タスキ)と共に次の世代に繋がれているのだ。
それではあらためて紹介しよう。
城西拓翼大学・男子駅伝部、
通称・『ジョーダイ』または『シグナルレッド』
当然ながら、チームカラーとユニフォームの色は目立つほどの赤色!
このチームと、各世代のメンバーたちが本編の主役だ。
そして、この物語は、ジョーダイ駅伝部の創立から、のちに『伝説』と呼ばれるに至るまでの歴代ランナーたちの魂の系譜(タスキリレー)なのである!