あらすじ
組を畳むはずだったその日、犬飼組の面々は事務所ごと異世界へ飛ばされた。
地方暴力団・犬飼組。暴排条例後、組員の脱退が続き残った組員は八人。
若頭の真壁亮司が最後の組会を終えようとした矢先、扉を叩いたのは、追手から逃げる公女だった。
「勇者」として召喚されたらしいが、こちらはラーメン屋に祭り屋、密漁屋、元ボクサーなどを抱えた、落ち目のやくざ一家である。
公女を見捨てるわけにはいかない。かといって、義理だけで八人の腹は膨れない。
食材を獲り、飯を作り、元手を回して商売を始める。野盗の砦を拠点に、犬飼組は異世界で食い扶持を探し始める。
だが、ようやく手にした居場所へ、公女を狙う討伐軍が迫る。
商売も仲間も守るなら、国を動かす連中と話をつけるしかない。
看板を下ろすはずだった八人が、剣と魔法の世界でもう一度のし上がる、異世界任侠ファンタジー。
キャラクター紹介
■真壁亮司〈犬飼組・若頭〉
癖の強い組員たちをまとめる、本作の主人公。相手の欲と人間関係を読み、交渉で活路を探す。かつては自分の組を持つ夢もあったが、今は組を無事に畳むことばかり考えている。
■犬飼辰雄〈犬飼組・組長〉
任侠映画と、筋を通すことを愛する親分。昔話は少々盛るが、人を見て仕事を任せる目は確か。残った組員たちの先行きを案じ、解散を決めた。真壁に自分の組を継がせられなかったことが、心残りになっている。
■金石直哉〈犬飼組・金庫番〉
組の金を預かり、各人の商売へ元手を出す犬飼組のナンバー3。稼いだ金を次の商売に回し、大きくしていくのが好き。真壁が相手の顔色を読む横で、手元の金と収支を確かめる男。
■田野上吾郎〈組員・ラーメン店主〉
組の資金で開いたラーメン店を、人気店に育てた料理人やくざ。味にも売上にもこだわり、旨いものはたくさん売りたい。出所のあやしい食材だろうが顧客満足のためには躊躇わず採用。
■北島一平〈組員・祭りと露店の仕切り役〉
陽気で騒がしく、祭りと酒席が大好き。露店の配置や人の流れ、片づけまで、現場を回す段取りが身についている。普段は真壁や金石に小言を言われているが、大勢が集まる場では頼りになる。
■荒川仁〈組員・密漁のプロ〉
夜の海で稼いできた、飄々とした男。昼間は眠そうにしているが、魚と水辺を見る目は確か。獲るだけで終わらず、流し先まで考えるのが仕事。田野上とは、食材を持ち込む側と料理する側で気が合う。
■黒岩猛〈組員・威圧感担当の元ボクサー〉
左目にわずかな死角を抱える、犬飼組の戦闘担当。酒を飲まず、鍛錬を欠かさず、強い相手と拳で戦うことに飢えている。殴り合いに飢え犬飼組に入ったが、暴力を使う機会もなく組の解散を迎えかけたところで、人間より強いものがいる世界へ来てしまった。
■葉山悠人〈組員・流行商売を渡り歩く最年少〉
タピオカ、食パン、唐揚げと、流行に合わせて商売を変えてきた若手。軽い口調の裏で、客や競合をよく見ている。売れなくなれば、資金が残るうちに次へ行く。犬飼組の全盛期を知らず、解散にもいまひとつ納得していない。
■セレステリア・ベルネ〈追われる公女〉
助けを求めて犬飼組の事務所へ飛び込んだ、十四歳の少女。国の政争に巻き込まれ、追手から逃れてきた。世間知らずなところもあるが、人の話を聞き、自分の言葉で答えようとする。八人のやくざと、行動を共にすることになる。
■ルビア〈雇われの魔法使い〉
犬飼組が力を借りる魔法使い。魔法の強さも限界も承知しており、無理な頼みにははっきり無理と言う。仕事の範囲と報酬をきっちり確かめ、引き受けた契約は守る。美食家。