あらすじ
三百年間、一日たりとも雨が止んだことのない都市《レイン》。人々は雨神ルーアを崇め、「雨は生命」「耐えることは徳」「乾きは魂の堕落」と教えられてきた。洪水も、病気も、湿気に満ちた暮らしも、すべては神から与えられた恵みだった。
――その日、初めて雨が止まった。
青い空。太陽。乾いていく道。減っていく病人。十二歳の少女ミナたち子供は、初めて見る晴天を素直に喜ぶ。「晴れてるほうが暮らしやすくない?」。しかし、大人たちはそう考えなかった。雨がなければ成り立たない仕事。三百年間続いてきた信仰。雨に耐えてきた自分たちの人生。晴天が長引くにつれ、人々は「雨が戻らない理由」を探し始める。
やがて、ただ夕日を見ていただけの子供たちは《乾きの徒》と呼ばれ、存在しなかったはずの《太陽教》まで語られ始める。世界が変わったとき、人間も変わることができるのか。それとも人は、現実のほうを「間違っている」とするのか。
晴れてしまった街で始まる、信仰と同調圧力、そして「正しさ」をめぐる寓話的ディストピア。