あらすじ

「アンリエッタ・ロウデン。お前との婚約を破棄する」  夜会の真ん中で書面を突き出された侯爵令嬢アンリエッタは、泣かなかった。  ロウデン家は代々、王国の文書を預かる家である。彼女は「書式の鬼」と呼ばれていた。  だから、その紙に不備が三つあることに、読み終わる前に気づいた。 「差し戻します」  けれど彼女を本当に黙らせたのは、書式ではなかった。  その紙に並んだ字が、三年間読み続けてきた手紙の字と、まるで違っていたことだった。  ──三年間わたくしに手紙を書いていたのは、あなたではありませんね。  翌朝、訂正された書面を持って屋敷を訪れたのは、王太子府の書記官だった。  彼の持ってきた紙は完璧だった。ただ一行だけ、書いてはならないことが書かれていた。  書式しか信じてこなかった令嬢が、たった一つの不備を受理するまでの話。

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カクヨム
カクヨム2026/09/29
  • 現在の作品婚約破棄の書面に不備がございましたので、差し戻します ~三年間わたくしに手紙を書いていたのは、あなたではありませんね~