あらすじ
瀬宮奏夢は、2年前に24歳で他界した最愛の弟・理夢の三回忌を翌日に控え、実家でセピア色に褪せたミニバラのドライフラワーと一通の手紙を見つめていた。理夢の死後、長男の広夢は逃げるように実家を離れ、家族の形はバラバラになっていた。法要の朝、実家に帰ってきた広夢と、そのドライフラワーを前に言葉を交わした瞬間、奏夢の意識は9年前へと遡る。
9年前。仕事のストレスで尖っていた奏夢と、穏やかな広夢は、高校生の理夢を過保護なほど溺愛していた。庭のミニバラの前で「三人でずっと一緒に幸せになろう」と約束を交わした日の深夜、理夢がパジャマ姿で奏夢の部屋へ来る。指先を震わせる理夢の異変を持病の喘息と信じた奏夢だったが、翌朝、理夢は意識不明の重体で病院へ搬送されてしまう。医師であり広夢の友人・佐伯晴馬から告げられた病名は、国指定の難病『拡張型心筋症』。数年というタイムリミットを知った三人の、過酷な闘病生活が始まった。
4年後、理夢はデザインの夢を追い、三人でキャンプへ行く。そこで「僕たちの幸せはミニバラみたいに絶対に枯れない」と語るが、帰宅後の深夜、再び心臓が限界を迎える。
さらに3年後、理夢の心臓は完全に停止。最期に「世界で一番幸せだった」と言い残し旅立った。
その後、奏夢の誕生日に佐伯から手渡されたのが、あのミニバラのドライフラワーと手紙だった。理夢は死の間際まで兄たちの未来を思い、一番美しい形のまま時間を止める「枯れない幸せの形」としてそれをデザインしていたのだ。現在。すべての法要を終え、手元にある手紙から理夢の本当の願いを受け取った奏夢と広夢。二人はバラバラだった悲しみを乗り越えて前を向き、力強く新しい一歩を踏み出す。