あらすじ
普通の中年会社員・佐伯修司は、いつものように商店街へ牛乳を買いに出かけていた。
ところが、その途中で突然、空間そのものが歪む奇妙な現象に遭遇する。恐る恐る近づいた修司が歪みに触れた瞬間、身体に異変が起こる。
帰宅した修司を待っていたのは、自分の身体が以前とはまるで違うという現実だった。
玄関のドアノブを壊し、冷蔵庫の取っ手を壊し、椅子まで壊してしまう。ペットボトルや卵、箸といった何気ない日用品さえ、力加減を間違えれば簡単に壊れてしまう。
自分の身体に何が起きたのか分からない修司は、長年の友人・田中に相談する。
しかし、その頃から日本各地では奇妙な現象が相次いでいた。
時空の歪みから、これまで地球上に存在しなかった生物――魔物が現れ始めていたのだ。
そんな中、修司は街で大型の魔物と遭遇する。
逃げ遅れた女性と子供を守るため、修司は魔物の前に立つ。
圧倒的な身体能力を持つ修司なら、魔物を倒すこと自体は難しくない。
だが、魔物には特殊な反射能力があった。
魔物に一定以上のダメージを与えると、そのダメージが攻撃した相手へ返ってくる。
さらに魔物が修司へ噛みついた際には、修司の異常な身体の硬さによって魔物自身の牙が傷つき、そのダメージまでもが修司へ反射される。
殴っても痛い。
蹴っても痛い。
噛まれても痛い。
圧倒的に強いはずなのに、魔物との戦いでは攻撃することそのものが大きな問題になってしまう。
そこで修司は、魔物を倒すのではなく、掴んで運び、人のいない場所へ追いやるという方法を選ぶ。
無事に女性と子供を助けた修司は、自分の力について初めて少しだけ理解する。
この力は、戦うためだけのものではない。
使い方さえ間違えなければ、人を助けることもできる。
しかし家へ帰った修司を待っていたのは、壊れてしまった日用品の数々だった。
世界を救うどころか、まずは玄関のドアを壊さず開けることから始めなければならない。
圧倒的な力を手に入れてしまった普通の男の、奇妙な日常が始まる。