あらすじ
広島県尾道市。
高校最後の夏、指先の皮が裂けるほどの激痛に耐えながらマウンドで散った投手・洋平。そして、新体操の過酷な練習でテーピングだらけの手を持つゆかり。
同じように何かを削りながら戦う二人は、夕暮れの坂道で交差し、不器用ながらも深く惹かれ合っていく。
しかし、卒業を機に二人の環境は残酷なまでに分岐する。
洋平は父の鉄工所を継ぎ、その手は泥から「落ちない機械油」へと汚れの種類を変える。
一方のゆかりは広島市内の短大へ進学し、洗練された大人の女性へと成長していく。
「触れたい。けれど、この黒く汚れた手では君の白いリボンを汚してしまう」
すれ違う環境、芽生える劣等感、それでも消えない柑橘系の甘酸っぱい香りの記憶。
嘘がつけない不器用な手を持った二人が、残酷な現実と距離に引き裂かれながらも、たった一つの純粋な愛の形を見つけ出すまでの、美しくも切ないヒューマンドラマ。