あらすじ
食事をしても、何も感じない。
大学生の和門明美は、ストレスから空腹を感じなくなっていた。
味は分かる。料理も嫌いではない。
けれど、「おいしい」「もっと食べたい」という気持ちが湧いてこない。
そんな彼女の隣の席に、いつも講義へ駆け込んでくる男がいた。
野辺山平。
いつも汗をかき、講義中でも飴を舐め、二リットルのお茶を飲み、そして――とにかく、よくお腹が鳴る。
ある日、空腹を隠そうともしない平に飴を渡したことをきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「じゃあ……、私のお弁当、食べてくれますか?」
食べることに何も感じない和門と、食べても食べてもお腹が空く平。
正反対の二人は、昼休みにお弁当を分け合うようになった。
平が美味しそうに食べてくれること。
一緒に食べること。
誰かと同じ時間を過ごすこと。
それだけで、和門の中に少しずつ何かが戻ってくる。
これは、食べることを通して出会った二人が、
ほんの少しずつ、生きることの温度を取り戻していく物語。