あらすじ
九月の終わり、土曜の夜。恋人と別れたばかりの男は、行く当てもなく古いシルビアを走らせていた。
県境を越えた小さな街。立ち寄った深夜のコンビニで、彼は金色の髪をした見知らぬ女性から声をかけられる。
「……あたしさ。さっき彼氏に振られたばっかなの」
互いの名前も、年齢も、これまでの人生も深くは聞かない。ただ同じ車に乗り、夜の道を走る。
やがて彼女は、小さな声で言う。
「……でも今は、一人でいたくない」
正しいか、間違っているか。
そんな言葉だけでは拾えないものが、ときにはある。
名前も連絡先も交換せず、未来も約束しない。
それでも確かに存在した、二人だけの一夜。
古いシルビアと、夜明け前の街を舞台に描く、
始まりも続きもない、名前のない男女の短編恋愛小説。