あらすじ
深夜のコンビニで、交わす言葉は「お疲れ」だけ。
夜勤六年目の芦原真は、十七歳で小説を書くのをやめてから、ずっと思っていた。どうせ俺の言葉は、誰にも届かない。
夜明けの交差点。トラックの前に飛び出した子どもに「危ない!」と叫んだのが、最後の言葉になった。
目を覚ますと、見知らぬ森。体は十七歳に若返り、手の中には祖父の形見の万年筆。
スキル表は全部灰色で、選べたのはたったひとつ――《言霊付与》。
賞金稼ぎに囲まれた銀髪の少女を見つけて、震える足で「やめろ!」と叫んだら、大の男が三人、泣きながら逃げていった。
錆びた短剣に「斬」と書けば、鑑定結果は「測定不能」。革袋に「蔵」と書けば、底なしの袋になる。
ただし、本気で込めた言葉しか力にならない。
助けた少女ユナは、甘えた声で「ありがとぉ」と笑う猫かぶり。敵には容赦ゼロの回復役で、神聖国に懸賞金をかけられている。
誰も読めないはずの石板には、祖父の名前。
「神の遣い」か、「魔王の再来」か。黒髪黒目の俺を、国も、エルフも、神聖国も放っておかない。
スローライフがしたいだけなのに、今日も誰かが助けを求めてくる。
誰にも届かなかった言葉が、世界に届くまでの物語。