あらすじ

一九二〇年代、冬のロンドン。 第一次世界大戦の狂気によってドイツ系の本名を剥奪され、国に名前を奪われた男、アーサー・ダビッド・シュロス。大英博物館の薄暗い書庫で彼が出会ったのは、かつて外交官サトウが二五二ポンドの移送実費のみで日本の文化破壊から救い出し、封印した『源氏物語』の写本だった。 主語が消え失せ、文法がはちゃめちゃに崩壊した千年前の東洋の暗号を前に、アーサーは文字の直訳を完全に捨てる。婚姻の記録すら遺さず、本能だけで響き合うダンサーの恋人ベリルが刻む裸足のモダンダンスのリズムを武器に、彼はそれを「女たちが命を削って歌う一篇のオペラ」として耳からハッキングし始める。 ディケンズの『大いなる遺産』やエルギン・マーブルが君臨する西洋の死んだ文字の文明を、最高に性格の悪い紫式部の「生の音」で内側から完璧にねじ伏せていく、知の逆転劇がはじまる。

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小説を読もう2026/09/29
  • 現在の作品Arthur David Schloss(アーサー・ダビッド・シュロス)『The Tale of Genji - 源氏物語』を英訳した男