あらすじ
幼い頃、悠斗は父にいつも言われていた。
「危ないときは、ちゃんとつかまれ」
自転車の練習でも、階段でも、海でも。
父の言葉と手に守られながら、悠斗は少しずつ大人になっていった。
やがて家を離れ、仕事に追われる日々。
「父はいつまでも元気でいる」
そんな当たり前を、悠斗は疑いもしなかった。
ある日、父が病に倒れる。
今度は自分が父に手を差し出す番だった。
父との別れを経て、実家を整理する悠斗。
そこで見つけた古い自転車と、一本の映像が、彼の記憶を静かに揺さぶっていく。
あの日、父は何を思っていたのか。
そして、父が教えてくれた「つかまる」という言葉の、本当の意味とは――。
これは、手を握ってもらっていた少年が、いつか自分の足で歩き出すまでの、親子の物語。