あらすじ
「彼岸花には、葉と花が同じ季節に咲くことがない。決して交わらぬ、あの不滅の理――」
激しい雨が降り注ぎ、重厚なパイプオルガンと聖歌隊のコーラスが響き渡る生と死の境界。そこで目覚めた「私」は、自分が肉体を失った亡霊であることに気づく。
見上げる夜空は十六夜。しかし、分厚い雨雲の向こうに月は隠れて見えない。
生者であった頃、すぐそばにあって自分を照らしてくれていた「月」のような温かい光。暗闇の中で背を向け、そのありがたみに気づかなかった「私」は、すべてを失った今、激しい悔恨とともに届かぬ光を乞い願う。
美しい賛美歌の旋律と、赤と白の彼岸花が狂い咲く揺籃(ゆりかご)の中で紡がれる、切なくも幻想的なゴシック・ダークファンタジー。
※第274回 超・妄想コンテスト「月的なサムシング」応募作です。