あらすじ
これは、日本の戦国時代を思わせる、史実とは異なる世界の物語。
「会いたくなったので来ました」
何の用もないのに、自分から会いに来た成田長親。
上杉謙信が望んでいたのは、長親を自分のもとへ縛りつけることではなかった。
誰かに求められたからではなく、長親自身の気持ちで、自らこちらへ来てくれること。
そんなある日、長親が突然言った。
「好きなのです」
思わず自分のことかと思った謙信だったが――長親が好きだったのは、菓子だった。
会いたい。
好き。
手を取りたい。
少しずつ変わっていく二人の距離。
長親が自分の気持ちを見つけるまで、謙信はその答えを急がせない。
そして長親が、自ら選び、自ら手を伸ばしたとき。
ようやく謙信は気づく。
つかまえようとしていたはずの自分こそ、ずっと前から長親につかまっていたのだと。
上杉謙信と成田長親の、静かでやさしい純愛短編。