あらすじ
昭和――。
名家に生まれ、何不自由なく育った一条志乃は、由緒ある橘家へ嫁いだ。
「一条家のお嬢様気分でいられては困ります」
嫁いだ先で待っていたのは、厳しい姑と、「橘家の嫁」として生きる日々だった。
そんなある日、屋敷の手伝いとしてやって来た青年・桜木修と出会う。
医者を志し、いつか東京へ行くという修。
庭の池で金魚を眺める志乃に、彼は言った。
――金魚は、海を知らない。
その言葉に、志乃は自分自身を重ねてしまう。
知らない世界。
見たことのない海。
そして、少しずつ惹かれていく、決して許されることのない相手。
やがて修は、夢を叶えるため東京へ旅立つ。
二人が再び会うのは、それから何十年もの歳月が流れた後だった。
すべてを胸に抱えたまま
二人の時間が、もう一度動き始める。