あらすじ
「君には侯爵家の女主人となる華やかさがない」
夜会の真ん中で、婚約者ジュリアンはエレノアとの婚約を破棄し、恋人を隣に立たせた。
エレノアは五年間、侯爵家の帳簿を整え、港の商人と交渉し、領地の支払いを守ってきた。けれど、その仕事をジュリアンも義母も知ろうとはしなかった。
彼女は書類と鍵を返し、自分の名で築いた信用だけを持って家を去る。すると荷は港で止まり、使用人の給金は遅れ、監査官からは証拠の提出を求められる。残された者たちは彼女を責めるばかりで、何が起きているのかさえ理解できない。
新たな仕事をエレノアに託したのは、冷徹と名高いヴァルクール公爵アルヴィンだった。彼は彼女の判断を聞き、成果に正当な報酬を払い、疲れた日には休むように言う。
「君の価値を、二度と他人の機嫌で決めさせない」
失った婚約の先で、エレノアは自分の仕事と人生を取り戻していく。一方、彼女を追い出した侯爵家には、先延ばしにしてきた約束の期限が一つずつ訪れる。