あらすじ
「助けて」と書けば、その男はどこへでも一瞬でやってくる。ただし——連れて帰るのは自力だ。
ダンジョン攻略の配信が人気を集める時代に、朝倉迅の配信を見ているのは、たった三人。
二十八歳の救助屋が流しているのは、道具の手入れと、地味な装備の話ばかりだった。
だが、そのコメント欄には一つだけ、特別な使い道がある。
本当に帰れなくなった人が「助けて」と書けば、迅はその人のもとへ、一瞬で駆けつけることができる。
ある日、常連の青年から救助要請が届いた。
彼が撮影を手伝っていたS級パーティーは、地図にない深層区域へ閉じ込められていた。帰還用の道具も動かず、救助隊も入れない。大勢が見守る配信の中で、四人は巨大な魔物に追い詰められている。
そこへ現れたのは、見覚えのない救助服の男だった。
「礼は地上で聞く。歩ける奴から手を貸せ」
強敵を止め、閉じた道をこじ開け、四人全員を連れて帰る。その一部始終が映った日から、小さな事務所に世界中の「助けて」が届き始める。
行く時は一瞬。だが、他人を連れて瞬間移動はできない。引き受けた相手が地上へ戻るまで、次の要請にも飛べない。
だから迅は、帰り道を作る。救った探索者と、道具を直す職人と、画面の向こうで道を探す視聴者たちと一緒に。
やがて届くのは、十年前に閉鎖された坑道からの一言。
「まだ、ここにいます。救助は来ますか?」
最強の救助屋が、無名の配信者から世界中に頼られる男になる。これは、助けた人の数だけ、仲間と帰る場所が増えていく物語。