あらすじ
「総務は利益を生まない。あなたの仕事なら、各部署で分担できます」
そう言われ、45歳の浅野タダシは長年勤めた会社をクビになった。
約300人分の勤怠、備品、健康診断、社用車、保険、上司の予定表。
誰かがやらなければ困る仕事を、ずっと一人で抱えてきた。
それでもタダシ自身、こう思っていた。
まあ、これくらい誰でもできる仕事だ。
ところが気づけば、そこは異世界。
行き場のない彼が冒険者ギルドで任されたのは、散らかったポーション棚の整理だった。
種類ごとに分けて、なくなる前に注文する。ただ、それだけ。
「解毒薬、すぐ出せます!」
「昨日、初めてちゃんと休めました」
「タダシさん、一日だけうちの支部に貸してくれませんか?」
誰かの仕事が楽になり、誰かの生活が変わり、ときには人の命まで救われていく。
やがて地方支部が、本部が、王国までもが彼を欲しがり始める。
一方その頃、彼を切った会社では。
『浅野!? 今どこにいるんだ!』
『頼む、一度会社に来てくれ!』
けれど本人だけは、今日も不思議そうに首を傾げる。
「いや、これくらい普通ですよ?」
これは、「誰でもできる」と切り捨てられた男が、王国にまで必要とされていく話である。