あらすじ

【シリーズ第三部。単体でも読めますが、第一・二部を先に読むと倍の深さで楽しめます】 二十九歳、会社員。同僚の彼と私は、週末になると女を演じ合う。渚、岬、明美──これまで私が着てきた女は、すべて彼が与えたものだった。 だから私は、初めて自分で女を作った。 二十歳の女子大生「雪絵」。地方から上京したばかりで、誰にも名前を呼ばれたことがなく、何も知らない少女。胸元の折れた奥歯を外し、白いコットンを着て、私は江ノ電に乗る。窓際には、一歳年上の先輩「しずか」を演じる彼が、すでに座っていた。 海辺で交わした契約はひとつ。雪絵の初めてを、彼の演じる同級生「雄貴」に奪わせること。そのために私は、夜通し「存在しない処女の血」を調合する。極薄の膜と血糊で作った信管を、衣服の下に仕込んで。 鎌倉の砂浜。江ノ島の夕暮れ。四人のグループデート。だが雄貴は、雪絵の肩に置いた手を離す。「大切すぎて、壊してしまいそうで怖い」。 信管は、弾けなかった。 敗北した私は男に戻り、しずかを深夜のバーから引きずり出す。しずかは囁く。「あの子、このままだと、近いうちに他の男に初めてを捧げることになるわよ」。五分後、雪絵のスマートフォンに、サークルのボス「亮」からのメールが届く。 新宿の居酒屋、すり替えたグラス。連れ込み宿と、突入する共犯者。遮光カーテンの部屋で、ドアを叩く雄貴。そして勝敗が決したはずのその時、鏡の中のしずかが問う。 ──あの時のあなたは、本当に百パーセント演技でいられたかしら? 演じることをめぐる、ひとつの恋愛小説。仕掛けと仕掛けが噛み合う、心理戦の第三部。 ※R15。暴力・性的な場面を含みますが、作中の暴力はすべて登場人物同士が仕組んだ「芝居」として描かれます。

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カクヨム
カクヨム2026/09/28
  • 現在の作品存在しない処女の血と名前という刻印・臨界のグラデーション第3部