あらすじ
「生きたくないけど、死にたくもない」
高校三年生の巴静香は、そんな思いを抱えながら毎日をやり過ごしていた。
ある日、机に伏せていた静香が顔を上げると、教室には誰もいない。校庭にはビルが生え、空を蒸気機関車が走っている。そこへ現れた体の透けた男は、「ここは夢の中だ」と言った。
夢の中なら、何をしたい?
静香がようやく見つけた願いは、「家に帰りたい」という小さなものだった。
男とたどる帰り道で、親友と笑ったカフェ、母と見た蓮の花、忘れていた記憶が次々と形になる。やがて静香は、目を背けてきた現実と向き合うことになる。
どうして家に帰りたいのか。そして、この男は誰なのか。
生きる理由を見つけられなかった少女が、死にたい気持ちを抱えたまま、もう一度「生きる」を選ぶ物語。
※自傷・自殺に関する描写があります。