あらすじ

エルフの村に、冒険者のギルドはない。Sが頂点の討伐ランクも、魔物に依頼を禁じるギルド法も──それらは村の外、人間の街の話。 土の中に、一匹の蚯蚓(ミミズ)がいた。名は疎鉄(そてつ)。目も耳もない体で、地中の振動だけを頼りに、何百年分もの土の記憶を食べて育った、世界に一匹だけの「考える蚯蚓」。 地中には、地上の誰も知らない世界がある。岩盤の亀裂、魔物の巣穴、地下水脈の流れ。疎鉄に目はない。だが皮膚一面の振動は、他人の「弱さ」だけが、土の鳴り方と違って響くのを感じ取れた。自分の弱さだけは、一生感じ取れなかった。 ――だが、姿は最弱の蚯蚓。進化の手前まで来たその夜、土ごと裂く上位の捕食者に見つかってしまう。 追い詰められた疎鉄を、あどけない力で掘り出したのは、畑のお手伝い中のエルフの子どもだった。「なんかいる!」──彼女、ルナリアも、疎鉄と同じく、まだ長い時を生きていない者だった。 畑の畝(うね)の下で始まる、エサの食べ比べと知略の毎日。ルナリアが拾ってきた高位魔物の残骸を食べて、疎鉄は何百年も早く「虺(き)」に変わってしまう。 共鳴契約、初めての冒険者登録、落第者ばかりのパーティ「白紙」。Fランクから始まる登坂の果てで、疎鉄がやがて手にするのは、人間の寿命とエルフの寿命の差──そして、誰かの隣にいるための「人の形」。 これは、地中の最弱が、空の頂点まで登る物語である。と同時に──まだ子どもだった二人が、千年を生きる約束を交わした物語である。

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カクヨム
カクヨム2026/09/28
  • 現在の作品最弱魔物のわたし、Fランクから竜まで登ることにしました