あらすじ
軍では問題兵士。
町では、なぜか誰もが彼の名を呼ぶ。
教会軍の一般兵、アルト。
いつも眠そうで、勝手に隊列を離れ、命令どおりに動かない。レベルも最低の「1」。
それなのに戦場では、誰より早く傷ついた者のもとへ駆けつける。
人間でも。
魔物でも。
騎士レオンが彼に違和感を覚えたのは、そんな食い違いからだった。
なぜ、倒せる魔物にとどめを刺さないのか。
なぜ、敵であるはずの竜人を庇うのか。
なぜ、自分が傷つくことには、あまりにも無頓着なのか。
アルトを調べ始めたレオンたちの前で、奇妙な食い違いが重なっていく。
人を襲ったはずの魔物。
暴れていたはずの竜人。
だが、目の前に残ったものは、その話とどこか噛み合わない。
同じ出来事を見ても、証言は少しずつ違う。
誰かが嘘をついているわけではない。それでも、見えているものだけが真実とは限らない。
そして、理由を問い詰められたアルトは、ようやく僅かに言葉を漏らす。
「このままじゃ駄目なんだ」
「……間に合わない」
彼は、何に間に合わせようとしているのか。
人間と魔物。
敵と味方。
正しいことと、正しいはずだったこと。
刃が落ちる、その前に。
もう一度、目の前の相手を見るための物語。