あらすじ
三十五歳、独身。
大手生活用品メーカーで主任として働く佐伯美緒は、
「仕事ができて当たり前」
「困ったときに頼れば何とかしてくれる人」
として扱われる毎日を送っていた。
次期管理職候補にも名前が挙がっている。
けれど、その座を狙う上司・黒川課長は、美緒の評価を少しずつ落とそうとしていた。
そんな中、美緒は一人の新入社員の教育係を任される。
朝倉律、二十三歳。
東大卒。
データ分析を得意とする期待の新人。
十二歳も年下の彼を、美緒は最初「優秀な後輩」としか見ていなかった。
ところが律は、誰も見ていなかった美緒の仕事を見ていた。
後輩の資料を直していること。
他部署との間に立って調整していること。
誰かが困れば、自分の仕事を後回しにして助けていること。
そして、美緒が作った重要な企画書の数字が何者かに差し替えられたとき――。
「佐伯先輩がミスをしたわけではありません」
会議室でただ一人、律が立ち上がった。
しかも感情だけで庇うのではない。
保存データ。
更新履歴。
作成記録。
数字の差異。
すべての証拠を揃えて。
さらに、美緒の企画を自分の手柄にしようとする黒川に対しても、律は一歩も引かなかった。
「先輩が不当に傷つけられるのは、嫌です」
私は三十五歳。
彼は二十三歳。
教育係と、新入社員。
十二歳も年下の彼を好きになるなんて、ありえない。
そう思っていたのに――。
「先輩は、もっと大事にされていい人です」
仕事では誰より頼られているのに、
誰かに大切にされることを諦めていた三十五歳の女性と、
彼女の努力も、弱さも、誰より近くで見ていた十二歳年下の新人。
これは、出世争いで嵌められた私が、
まっすぐすぎる年下男子に全力で守られ、
もう一度「恋の主役」になるまでのお話です。