あらすじ
「お前が戦えれば、あそこで倒せた」
仲間三人の命を救った帰還士ノルに返ってきたのは、報酬ではなく、契約を切るという言葉だった。
攻撃魔法は一つも使えない。できるのは、自分の足で歩いた道を戻ることだけ。
そんなノルが流れ着いたのは、地上へ出るにも、食べ物を運ぶにも、高い運賃を取られる底街ダルカだった。
「帰りたいのに帰れない奴なら、この街にいっぱいいる」
修繕屋のリゼと出会い、古い魔法装置を直したノルは、迷宮の底と地上をつなぐ小さな「駅」を開業する。
一便四人。次の便までは四十拍。
最初のお客は、売れ残りの豆を抱えた行商人。
魔晶石代と修理費に頭を抱えながらも、安く届いた野菜や、無事に帰ってきた人々の笑顔が、駅の明日を少しずつ支えていく。
だが、運送を独占する商会が駅を狙い、街の地下では不気味な異変が始まっていた。
自分で歩いていない道はつなげない。一度に全員を運ぶこともできない。
それでも、帰りを待つ人がいるのなら。
「帰るまでが、仕事だ」
これは、帰ることしかできない男が、仲間と一緒に、誰も置いていかない道をつくる物語。