あらすじ
六十歳で会社を辞めた伊藤。
最後の日、机の引き出しに残っていたのは、短くなった鉛筆が二本だけだった。
予定もない。
しばらく公園へ行ったり、図書館へ行ったりして暮らしていたが、ある日、普段乗っている110ccのカブを見て思う。
これなら、もう少し先まで行けるんじゃないか。
買ったのはテントとマットくらい。
あとは家にあるものでいい。
足りないものは、途中で揃えればいい。
行き先を決めないまま、伊藤は北へ走り出す。
道を間違える。
風呂に入る。
洗濯をする。
知らないものを食べる。
酒を飲み、知らない人と少し話し、翌朝には別れる。
そんな旅の途中、遠野で真理子という女に出会う。
伊藤より少し若く、今も忙しく働いている。
予定を立てる真理子と、明日のことも明日考える伊藤。
本来なら、水と油みたいな二人だった。
一度は別れ、また会い、今度は一緒に西へ向かう。
それでも最初は、一人旅が二本並んでいるような旅だった。
大きな事件は起きない。
人生を変える奇跡もない。
必要なものは、案外少ない。
旅も、たぶん同じだ。
カブで一日110kmくらい。
今日はここまで。
明日は、もう少し先へ。
伊藤と真理子の、のんびりしたロードノベル。
※本作はカクヨムにも掲載しています。