あらすじ
1.あらすじ
バタフライエフェクト。些細な事象が、最終的に想像もしていなかったような大きな事象に繋がる現象のことを表す言葉だ。
事故によって、「記憶」「感情」「言葉」を全て失った少年の自我は、限りなく「無」に等しい状態になっていた。
このとき、後に覚醒する「Gaea(ガイア)」が自我の中心にある深層心理に封印されたことは、本人はもちろん周りの誰も気が付いていない。
意図せず、徐々に覚醒していくGaeaのチカラに戸惑いながらも、地球の未来を見届けるため一人の青年が行動を起こす。
その青年の名前は、神野 太陽(じんのたいよう)。
職業は、企業や学校領域でキャリア支援を行う「キャリアコンサルタント」。
世の中に均衡(バランス)をもたらす役割を背負うことになる。
大学の職員であり、「カオス理論」の研究者でもある、深海 明日美(しんかいあすみ)と出会い、様々な課題を抱える相談者との対話を通して、自分たちの過去と未来に向き合うことになる。
「キャリア理論」と「カオス理論」を融合することで、ガイアを正しく扱うために必要な二つのデバイス、「Ego Cube(エゴ・キューブ)」と「Spell Card(スペル・カード)」の実用化に向けて実証実験を進めていく。
その過程で「見えないチカラ」を扱う組織「オメガ」との調和が必要になるのだが……。
そこに待っていたのは、幾度もの葛藤と挫折、人間の感情と欲望が渦巻くいばらの道だった。
命を「奪うチカラ」と「生かすチカラ」。
そしてそのチカラの源「Gaea」。
果たして、数千年に一度現れると伝わるGaeaを正当に扱える存在、「言葉を綴る救世主」は現代に現れるのか?
登場人物
名前 神野 太陽(じんの たいよう)
年齢 29歳(男)
身長 182cm
体重 78kg
職業 キャリアコンサルタント
キャリア支援を行う個人会社を経営し、大学では非常勤職員として学生支援を担当している。
幼い頃、事故で記憶喪失になった際に「ガイア」を深層心理に宿した。
多くの挫折を経験し、自身の経験を元にしたキャリア理論を確立しようとしている。
頼りない雰囲気だが人前で話すことやコミュニケーションと取ることは得意で、女性の扱いは慣れている。なんでも器用にこなす。
行動力があり好奇心旺盛、迷いを抱えながらも理論を確立するために必要な、デバイスの研究機関を設立するための「プロジェクトSpell」を発足する。
名前 深海 明日美(しんかい あすみ)
年齢 26歳(女)
身長 157cm
体重 43kg
職業 大学研究員
太陽の持つ「ガイアのチカラ」に興味を持つカオス理論の研究者。
普段から社交的で明るく振舞い、男性に好意を持たせることをゲーム感覚で楽しむ小悪魔タイプでお誘いが絶えない。
「愛情に甘える」という経験ができなかったことが原因で、どこか自虐的な儚さと美しさを合わせ持つ。
相手に気を遣う繊細さを持ち、ありのままの自分を受け入れてくれる相手を求めている。
名前 ジン
年齢 50歳前後(男)
身長 180cm前後
謎の協力者。重要な場面で突然現れ、助言や手を貸して導く謎の人物。
全てを見通しているような印象を感じさせる雰囲気を持っている。
名前 権藤 武(ごんどう たけし)
年齢 59歳(男)
身長 178cm
体重 85kg
職業 大手が運営する福祉施設グループの事業部長
定年が目前に迫り自分の引き際を考えている。
その風貌は堅気のそれとは程遠く、納得できないときは誰にでも噛みつく勢いで職場では経営陣からも恐れられ、裏社会の人間からも一目置かれている存在。
名前 九条 零(くじょう れい)
年齢 30歳(男)
身長 177cm
体重 72kg
職業 システムエンジニア
太陽にとって、物理学でいう反物質とも言える「対」の理論の持ち主。
かつて共にキャリア理論の基礎を学び、一緒に思想領域「エゴ・キューブ(Ego Cube)」の理論を研究していた。
その過程で「自我の育成」の手段を巡って決定的に袂を分かった。
太陽の理論が「全てを受容し、均衡をもたらす」ことを是とする「調和」の理論なら、彼の理論は「互いの負荷を跳ね返す耐性を強化し、均衡を作る」という「選別」の理論。
世界観
1. Gaea(ガイア)
Gaeaとは、この物語で最も重要なチカラの源で「バタフライエフェクト」を起こす存在。
・命を奪うチカラ
・命を生かすチカラ
どちらも「言葉」によって扱うことができる。
言葉はGaeaによって世界に影響を与える大きな現象となる。
扱う者によってはチカラの反動で暴走してしまい、大きな歪を生み出し自ら破滅してしまう。
Gaeaを正当に扱えるのは、チカラの反動に耐えられる自我を構成できる資質の持ち主。
数千年に1度現れるその者は「言葉を綴る救世主」と呼ばれている。
2.プロジェクトSpell(スペル)
太陽が発足したプロジェクトの名称。
理念は、「自我の育成 - Ego Nurturing -」。
目的は、それまで都市伝説として扱われていた自我を理論として確立し、必要なデバイス「Ego Cube(エゴ・キューブ)」と「Spell Card(スペル・カード)」を開発するための研究機関を設立すること。
太陽がプロジェクトSpellを発足しようとしていたとき、
「何がやりたいんだ!」
「ひとりでやらせとけ!」
その頃多方面から浴びせられていた。
怒らせて奮起させるためなのか、単に悪ノリしてるだけなのか。
「お前らこそどうしたいんだよ」。
そんなことを考えながら飽き飽きして逆に冷めていた。
そのときからSpell Cardの必要性を探り始めた。
一人では到底成し得ない壮大な目標に向かうため、同じ意思を持つ仲間を募っている。
人間の感情をデータ化して固定することが可能なカードが理論の確立に不可欠であることを発見したことをきっかけに太陽が発足した。
3.Ego Cube(エゴ・キューブ)
太陽が確立しようとしているキャリア理論の中核で、個人が深層心理に構成する自我の思想領域を具現化するデバイスを「Ego Cube」と呼ぶ。
1.生まれたときの自分(基準点ゼロ)
まず、自分の原点とも言える「基準点ゼロ」を好きな場所に打つ。
例えば0歳の自分の現在地。
目先のことを可視化する場合は、今現在の自分でも構わない。
この基準点ゼロを認識するのが「自己理解」の入り口になる。
今の自分は、どんな環境に在るかを具現化する。
2.ボーダーライン(境界線)
次に、その点を基準として左右に同じ長さで伸びる横線を引く。
このボーダーラインが自分の振れ幅であり、足元の支えとなる。
境界線の長さには生まれ持った「体質(DNA)」で個人差がある。
自分ではどうしようもない生活環境「地域や家庭」によっても変わる。
残酷だが、人生のボーダーラインは平等ではない。
自分の現在の環境を一つ一つ浮き彫りにしていき、長さを求める。
当然ですが、成長と共に長さは変化する。
基準点ゼロをどの時点にするかでも大きく変化する。
3.絶対値(目標値)
ボーダーラインの両端を「絶対値」として設定する。
絶対値とはゼロから「プラス方向とマイナス方向の両方」に、どれだけ離れているかを表す値。
例えば「5」も「-5」も、絶対値では同じ「5」だ。
自分の意志や目標の大きさによって、数値が変化する。
絶対値(目標)を数値化するために必要な変数は次の二つだ。
・なにか(自分の意志)
・誰か(他者の存在)
「自分の意志と他者の存在を理解して初めて目標として認識できる」という考え方だ。
人は一人では生きていけない、必ず他者の存在が必要になる。
独りよがりでは、単なる自己満足で終わる。
この変数の乗算から求められた数値を絶対値と仮定する。
絶対値 = なにか × 誰か
ここでの絶対値とは「自分のやりたいこと」で目標。
絶対値が大きくても小さくても、横線の長さ変わらない。
その代わりに、目盛の間隔が狭くなり「密度」が高くなる。
例えば「恋人が欲しい!」などの「目標」。
目標に辿り着くためには、告白してフラれるかもしれないという「マイナスの感情」と、受け入れてもらえるかもしれないという「プラスの感情」。
このバランスを受け入れられたとき行動に移せる。
行動に移すことで経験が蓄積される。
自分が求める恋人を作るためには、自分をさらけ出して何度もフラれてマイナスの感情を経験することも必要だ。
経験とは、簡単に言えば不安を乗り越えて行動したことによって得た、失敗体験と成功体験の合算値だ。
目標が大きければ大きいほど、プラスとマイナス両方で高い密度が必要になる。
これは就職活動も一緒ですし、仕事はもちろん色々な社会生活に当てはめることができる。
負荷の掛かることを避けていたら、密度は上がらず「スカスカの自我」になる。
これがEgo Cubeでの絶対値の考え方だ。
4.奥行き(年齢)
基準点ゼロから年齢という時間軸を奥行きの線として追加する。
その終点を現在年齢とする。
これで2次元化した平面になる。
現在年齢である奥行きは、時間と共に経験を重ねることで、自分の世界観が広がっていくことを意味する。
年齢を重ねている人は、多くの時間を過ごしいる。
人によって時間の密度は違うが、それに対して敬意を持つ事も必要だ。
5.左右の高さ(自己満足度)
「マイナスの意志」と「プラスの意志」、それぞれの点から満足度(受容)の高さを表す縦線を真上に向かって引く。
これはパーセンテージで数値化し、上端が100%になる。
・負の自己満足度は「自己受容」が、どの程度できているか。
・正の自己満足度は「他者受容」が、どの程度できているか。
どちらもバランスよく同じくらいできていることで、直方体としての安定度が高くなる。
自分のことだけ考えて負の自己満足だけが高くなったり、逆に相手のことばかり考えたりしていると、どちらかに偏ってしまう。
左右の高さが違ってしまうと、いびつな形になって安定せず歪みが生まれる。
6.基準点ゼロからの高さ(自己一致率)
最後に、左右の自己満足度の高さを線で結び、基準点ゼロから自己一致率の高さを表す縦線を真上に向かって引く。
これもパーセンテージで数値化する、上端が100%ということになる。
これで直方体が出来上がる。
自己一致率は、自己満足度の影響を大きく受ける。
仮に「正の自己満足度が20%」だと仮定しても「負の自己満足度が0%」なら、「自己一致率は10%」ということになる。
左右の自己満足をバランスよく高めることで自己一致率がより高まる。
4.言葉のチカラ
誰しも、自分の言動が「負のチカラ」として働いているような、そんな気分になる場合がある。
太陽が「それ」を受け入れるまで相当な時間が掛かっていたが、検証しながら少しずつ状況を理解するしかなかった。
7.意思のチカラ
Gaeaを制御するためにはEgo Cubeを構成し安定させることが必要だと理解し始め、それに必要な「なにか」と「誰か」を見つけるため、気が遠くなるほどの自問自答を繰り返してきた。
太陽がそのとき辿り着いた「誰か」は、「未来ある子どもたち」になった。
「なにか」は、「破壊と創造」になった。
目標が定まれば実現のための手段が必要になる。
人は自分の存在を形あるもので残すことに価値を感じ、誰もが創作者になることができる。
文字、声、音楽、画像、動画。
そのためには人間が五感で満足できて未来に残せる「入れ物」が必要になる。
自分の意思をデータとして保存できて、スマホなどのデバイスで直接読み込み可能な電子記録媒体。
Ego Cubeから生み出される感情をデータ化して、状態を固定するための物理的な入れ物になるのがSpell Cardだ。
短歌や俳句のような短い文章なら現在のテクノロジーでも実現可能なのは既に分かっている。
保存容量を増やしデバイスとの通信速度を上げたカードを製品化できれば、音楽や映像の保存も可能になり未来に残せる記憶媒体になり得る。
密度の高い意志が固定されたことで太陽のEgo Cubeは安定し始め、Gaeaの反動に耐えられるだけの強度を保ち、何処まで続くかも分からない、いばらの道を進んで行くために必要な揺るがない意思のチカラを持ち始めていた。
8.見えないチカラ
理想的なSpell Cardは現在のテクノロジーではまだ作れない。
しかもその研究開発には、世界に影響力を持つ巨大企業でもなければ用意できないような膨大な資金が必要になる。
太陽は人生を掛けてそこまで辿り着く覚悟を持つようになり、入手可能なICチップ内蔵カードで試作品を作った。
想像通り、実現できればEgo Cubeを安定させることができる「理想的な記憶媒体」になると確信した。
ここから「プロジェクトSpell」が本格的に始動することになる。
一人では到底辿り着けない壮大な構想の実現に向けて、太陽は知人に声を掛け、試作品を見せて協力をお願いすると何人かが興味を持ってくれた。
しかし、協力を約束してくれた人たちの周囲でも不思議な出来事が起こり次々と離脱していった。
姿は見えないが、どうやらSpell Cardの研究開発を好ましく思わない存在があるようだ。
この「見えないチカラ」に抗う必要があることを感じた太陽は、敢えて一人になることを選択し、大切な人ほど自分から遠ざけるような振る舞いを始めた。
見えない相手と対峙するには、誰かを護りながら戦えるほどの余裕が無かったからだ。
まずは自身のEgo Cubeを強固な状態で維持できるようになることが先決だ。
サンは見えないチカラの正体を見極めるため、その起源となる「記憶」を綴ることにした。
その経過でGaeaのチカラと、それを正当に扱える「言葉を綴る救世主」が過去に存在したという事実に辿り着いた。
そして、そのGaeaが自分の自我に在ることに気が付き始めた。
9.記憶のチカラ
人類が今まで累計何人存在してきたか想像できるだろうか?
地球上に生命が誕生したのは、40億年以上前だと言われている。
現在80億人以上存在している人類が生まれたのは約700万年前。
その生命が積み重ねてきた「記憶の数」はこの宇宙が存在する限り無限に等しいことを、過去の記憶と向き合う覚悟を持つことで初めて認識することができる。
その「記憶」を生物が扱うために必要な言葉。
それを文字として綴ることで未来に残す方法を得た人類は進化の速度を速め、地球上の生命の中心となった。
「ガイア理論」
一言でいうと「地球を巨大な生命体」として捉える思想に近い理論だ。
主張が大きいため科学的な検証を欠いており研究題材としては避けられがちだが、その意味することを巡って多くの議論を呼ぶ原因にもなっている。
「カオス理論」
予測できない誤差によって複雑になっていく様子を、力学などの現象として認識できる理論だ。
ランダムな変数ということではなく、数的誤差によって生じる分岐回数が増えることによって起こる現象に大きな変化が生じる原因になるという考え方だ。
地球上のどこかで蝶が羽ばたいた程度の小さな出来事が起因になり、遠く離れた大陸で竜巻が起こり得ることを「バタフライエフェクト(バタフライ効果)」と呼ぶ。
それを起こすのが、このふたつの理論を結びつける記憶のチカラ「Gaea」だ。
Gaeaを正しく扱えずチカラが暴走してしまうと自分やその周辺に自然災害が起こり多くの命を奪う場合もあるが、正しく扱える者がいれば多くの命を生かすことができる。
現在のコンピューターでは無限の値を扱うことはできないが、量子コンピューターが実用化され「重力」と「量子もつれ」が解明されれば可能性はあるかもしれない。
太陽はGaeaと向き合うため、自分自身を研究対象にして理論を確立することにした。
10.模倣のチカラ
カオス理論でも取り上げられるバタフライエフェクトは、なぜ起こり得るのだろうか?
生命は「生きる」という生存本能に従い「模倣」することで命を繋いできた。
それを真似ることで命の危険を回避できることを学び、進化してきたことは生物の長い歴史が証明している。
学ぶことを放棄した生物が淘汰されていくのは自然界の摂理だったのだろう。
太陽はこれを掘り下げて、バタフライエフェクトにひとつの仮説を立てた。
「起因となる些細な事象をもとに自然界が模倣の連鎖に入ることで、個体では起こせないような大きな現象が起こり得る」
創作で語り尽くされたような台詞だが、
「ひとつひとつは小さなチカラでも、数が集まることで大きなチカラとなる」。
これも数の論理として生物の歴史が証明している事実だ。
数の論理だと記憶の数は無限と等しいわけだから、そのチカラも無限に等しいことになる。
自然界が模倣の連鎖に入る仕組みは次の流れだ。
1.起因となるのは、巨大な重力を持ち自ら熱(エネルギー)を生み出せる太陽(恒星)の存在。
↓
2.その重力と熱の影響を受け、自らも大きな重力を持つ地球は、互いに引かれ合い、大地は常に活動し続け、水と大気が循環する存在。
↓
3.その地球上で起こる自然現象を模倣して、言葉や行動として創作する「意思という小さい重力」を持った生命の存在。
↓
4.それを自然界の多くの生物が真似ることで大きな現象が起こる。
この連鎖が嚙み合ったときバタフライエフェクトは起こり得る。
これは人間社会でも同じような経緯で起こる。
「流行」もバタフライエフェクトを身近で感じる現象のひとつだ。
模倣は本来、地球上の生命が数十億年かけて繋いできた尊い行いだ。
「生物を飼う」ことで文明が発展し、命の安全が保障させた現代の人間社会では、真似ることは生きるためというより娯楽になりつつある。
現在は「模倣」を「真似る」ことを「ものまね」と呼んでいる。
意識している人は少ないだろうが、真似る対象を軽んじて尊重しない行為は、これまで生命を繋いできた八百万の神を冒涜しているのと同じだ。
11.結びのチカラ
繋がりは「結ぶ」ことで生まれる。
日本では神話の時代から「むすひ=結び」として、それに関する文化が多く存在する。
分かりやすいところでは、願いを込めて紐を結ぶことで人の感情をそこに留まらせることができると考えられ、現代まで伝わっている。
「繋がり」とは登山でお互いの身体を結ぶ命綱に近い存在だ。
一緒に山を上ることを示す意思であり、道連れで崖に落ちそうになる危険をも共有する覚悟が無ければ本物の繋がりとは呼べない。
その結びにどんな願いや想いを込めているかにもよるが、自分の意志で簡単に結んだり解いたりできるものではない。
結びによって安定している状態を解けば、そこに留められていたチカラが解放され反動が起こる。
その存在が大きければ大きいほどその反動も大きくなる。
日本の歴史を遡ると、平安時代に文化の発展のために決断したのであろう「神仏習合」という大きな「結び」が行われたが、明治維新後に「神仏分離令」により結びを解いた。
結果的にその反動によって多くの命や思想が失われたのは歴史が物語っている。
結びのチカラは軽々しく扱っていいものではない。
12.命のチカラ
人生にはその人の目にしか見えないものがある。
生物としての命は1度限りだが、挑戦と挫折を経験することで人生を何度もやり直すことになる人も存在する。
それを認識できるのは、境界線を超える覚悟を持てる人だけだ。
人生をやり直すと口で言うのは簡単だが、その都度「死」を経験することになる。
自分の死に直面すると大抵の人は絶望するだろう。
それを受け入れるのは容易なことではない。
太陽は自分が把握しているだけでも10回前後の死を経験してその都度受け入れてきた。
把握していない数を入れればもっと多いだろう。
太陽のEgo Cubeには、その数だけ「基準点ゼロ」が存在する。
幾度もの死を受け入れる度、樹木が年輪を重ねるようにEgo Cubeが何層にも構成され密度は高くなり強度を増し重力を生むようになる。
人生とは自分のキャリアの地図を持つことだ。
何らかの理由で持っていた地図を手放すことになっても、また新しい地図を持つことができれば再び歩み始めることができる。
命を扱うチカラは軽くない。
最低でも自分の死を受け入れ、さらに他者の命も背負い、その重さに耐えられるだけの密度を持ったEgo Cubeを構成できなければ正しく扱うことはできず、周囲の影響を受けて欲と感情のままに暴走するだろう。
身をもってそれを経験してきた太陽は、誰よりもそれを強く感じていた。
13.反動のチカラ
好きと嫌いは表裏一体。
それを感情論だと思う人が多いだろうが、量子力学が注目されるようになって印象が変わってきた。
太陽は「量子もつれ」と「重ね合わせ」を解明するために「絶対値」の概念が必要だと仮定した。
絶対値とは、基準点になるゼロ(無関心)からプラス・マイナス方向の両方に、どれだけ離れているかを表す値だ。
「なにか」と「誰か」は変数だから、人によって対象が変わることになる。
恋愛に例えると、恋をした相手が「誰か」になり、その相手と共有したい未来が「なにか」になる。
普通の人なら誰もが経験することだろう。
この大きさは理論上では無限大だ。
現在のコンピューターでは「無限」の概念を扱うことができない。
最近話題になっている量子力学を応用した量子コンピューターがその可能性を秘めているが実用化はまだ先のようだ。
他者への感情は、正でも負でも大きければ大きいだけ無関心から離れていき密度が増す。
自身の限界を超えて大きくなり過ぎると平常心を保つことが難しくなり、思いもよらない行動を起こしてしまう。
最も危険なのは自分でも制御できないくらい絶対値(愛)が大きくなった状態で「誰か」を失ったときだ。
その場合は感情が基準点ゼロに戻ることになるのだが、そのときの「反動のチカラ」が大き過ぎて制御できない場合がある。
その反動のチカラの行方が自分に向くか他者に向かうかはその人次第ということになる。
14.無限のチカラ
「愛の大きさは無限大」。
創作で使い古されたフレーズに感じるが、有名な物理学者でも「愛は物理を超える」と言うくらい深い。
太陽はGaeaを制御するために必要なのはこの「無限」を扱うことが必要だと仮定していた。
「量子力学」。
相対性理論と並び始めている現代物理学の基礎的な柱で、簡単に説明すると、目に見えないほど小さな世界のルールのことだ。
二重性という日本語で表現されているが、ふたつの性質が同時に存在するという一般的に常識とされてきた古典物理学では説明できない「量子もつれ」と呼ばれる現象が実際に起こる。
人類はこの「あやふやで不思議なルール」を解明するために研究を進め、身近なところではスマホやMRIなどの医療機器に使用する半導体に応用され、これほど便利な生活を送れている。
近い将来、量子コンピューターが実用化されることで、一気にシンギュラリティ(技術的特異点)を越えて「限りなく無限に近い値」を扱えるようになる。
バタフライエフェクトは無限を扱えるようになることで証明できる。