あらすじ
森野しずく、ひとり暮らし。
生活費は月十五万円。
彼女には、ひとつだけ変わったところがある。
母方の家系に伝わる話によれば、しずくはエルフの末裔なのだ。
尖った耳もなければ、魔法も使えない。
ただ、昔は植物の声が聞こえた。
けれど東京で暮らすうち、その声もすっかり遠くなった。
そんな彼女が、毎月一日にだけ食べるものがある。
一粒の、果汁グミ。
「森の声が聞こえなくなったら、果実を食べなさい」
亡き母の言葉を思い出しながら、ぶどう味のグミを噛んだ朝。
百円ショップで買ったパキラが、久しぶりに話しかけてきた。
――おはよう。
家賃六万二千円。
食費三万円。
そして今月から、森費三百円。
都会の片隅で暮らすエルフの末裔と、小さな森の物語。