あらすじ
「フィオナ、今日もかわいいね。好きだよ」
「はいはい。知ってます」
大魔法使いローレンス・クロウリーは、今日も軽々しく「好き」と言う。
戦争孤児だった7歳のフィオナを拾い、育て、魔法を教えてくれた人。
幼い頃から「かわいい」「大事だ」「好きだ」と惜しみなく愛情を注がれてきたからこそ、フィオナは知っている。
師匠の言う「好き」に、深い意味なんてない。
少なくとも、フィオナが望むような意味は。
けれど23歳になった今も、叶わない恋を抱えたまま師匠のそばにいるわけにはいかない。
この恋を終わらせるためにも、そろそろ師匠離れをしよう。
そう決めたフィオナは、王都で魔法使いとして働き、この家を出るつもりだとローレンスに告げる。
いつものように笑って「頑張っておいで」と言われると思っていた。
ところが。
「……フィオナ。ここを出るの?」
いつも余裕たっぷりの大魔法使いから、笑みが消えた。
フィオナは知らない。
かつて娘のように愛されていた自分が、いつの間にか一人の女性として愛されていることを。
そして、何気なく聞き流してきた彼の「好き」が、ひとつ残らず本心だったことを。
これは、叶わない恋を終わらせたい弟子と、愛する弟子をどうしても手放せない大魔法使いの物語。
彼の言葉は、今日も軽い。
――けれど、その愛はどうしようもなく重い。