あらすじ
テオとリリーが村へ向かった同じ頃、王都では二つの勢力が水面下で動き始めていた。古参貴族グレゴリーは、王女と発明家の少年が「鉄と道」について地図を広げて話していたという噂を耳にし、保守派の貴族たちと共に警戒を強める。彼はテオの発想の出どころに漠然とした疑念を抱きながらも、独自に情報収集を始めることを決意する。
一方、フィッツジェラルド伯爵は自室で鉄道のスケッチを見つめ、抑えきれない興奮を覚えていた。若き日、窮屈な社交界に息苦しさを感じていた自分を、型破りな発明家たちとの出会いが変えてくれたことを思い出しながら、彼はこの計画に本気で向き合う決意を固める。グレゴリーたちの反発、莫大な資材、そして灰色連峰という壁――それでも伯爵は、資材の目星や協力者の名を丁寧に書き出し、テオたちが戻るまでの準備を進めていく。
期待と警戒。王都の夜の中で、それぞれの想いが静かに、しかし確実に育まれていた。