あらすじ
妹が婚約者の子を宿したと告げられた日、伯爵令嬢エレノアは、婚約者だけでなく、自ら作り上げた交易案まで奪われた。
家族の命令で国境の別邸へ送られる途中、何者かに細工された馬車が崖から転落する。
一命を取り留めたエレノアは、すべての記憶を失い、隣国ノルディア帝国の皇太子レオンハルトに救われた。
敵にも味方にも容赦しないと恐れられる「冷酷皇太子」。
彼は素性の知れないエレノアを疑いながらも、彼女が持つ交易と文書の能力を見抜いていく。
働くなら契約を結び、正当な報酬を支払う。
優れた提案には、提案者である彼女の名を記す。
「お前の功績は、お前のものだ」
それは当然のことのはずなのに、エレノアが初めて与えられた言葉だった。
この人は、私の能力を利用しても、私から何も奪わない。
やがてエレノアは、自分が祖国ですでに死んだことにされ、功績も名前も別の者のものになっていると知る。
奪われた人生を取り戻すため、彼女は封じられた過去と向き合うことを決める。
けれどレオンハルトが望んだのは、彼女を自分のものにすることではなかった。
帰るのか、残るのか。
誰を愛し、どこで生きるのか。
そのすべてを、エレノア自身に選ばせることだった。
これは、役に立たなければ愛されないと思い込んでいた伯爵令嬢が、何も差し出さなくても愛されることを知り、自分の名前と人生を取り戻す物語。