あらすじ
昼間のオフィス街。どこも昼休憩の時間帯なのだろう、行き交う人々はどこか気の緩んだ表情を浮かべて、白いタイル張りの地面に靴音を響かせていた。空には薄い雲が幾重にも重なって広がり、陽の光が淡く滲んでいる。立ち並ぶビルのガラス窓には灰色がかった空が映り込み、どこか静かで湿った気配が辺りに漂っていた。
おれは花壇の縁――ベンチかどうかは知らない――に腰を下ろし、弁当屋で買った弁当を膝の上に載せていた。周囲には木々が等間隔に立ち並んでいて、風が吹くたびに葉がさわさわと音を立てていた。少し離れたところには開けた空間が広がっており、さらにその向こうには大手企業のビルが威容を誇るかのようにそびえ立っていた。あの一角を歩くたびに、名だたる大企業というのは会社の周りの敷地までこうも広々としているのかと、いつも密かに圧倒される。