あらすじ
高校二年生の白石透には、人の嘘を見抜く特殊な能力がある。
――正確には、「嘘をついた人間の声だけが、少し遅れて聞こえる」。
便利そうに思える能力だが、実際にはそうでもない。
「昨日、何してた?」
「家にいた」
その答えが嘘なら、最後の「いた」だけが、数秒遅れて聞こえる。
だから透は、人を信用することが苦手だった。
そんな彼の前で、クラスメイトの少女・水城七海が学校の屋上から転落して死亡する。
警察は自殺と判断した。
遺書もあった。
目撃者もいた。
防犯カメラにも、七海が一人で屋上へ向かう姿が残っていた。
ところが翌日。
死んだはずの七海から、透のスマートフォンにメッセージが届く。
『私が死んだ理由を知りたかったら、昨日の午後三時に戻って』
透は混乱する。
昨日の午後三時。
その時間、七海はまだ生きていた。
そして透には、もう一つだけ気になることがあった。
七海が死ぬ直前、彼女は透にこう言っていたのだ。
「ねえ、白石君。もし私が明日死んだら――誰も信用しないでね」
その言葉を最後に、七海は死んだ。
これは、死んだ少女が残した謎を解く物語ではない。
「なぜ彼女は、死ぬ前に自分の死を予告できたのか」
その答えを探すうちに、透は自分自身が事件の中に組み込まれていたことを知る。
そして最後に明らかになる。
七海が最も警戒していた人物は、犯人ではなかった。
彼女が本当に恐れていたのは――
「嘘をつけない人間」だった。