あらすじ
「蓮、あの人とは離婚するって約束したよね。いったいいつまで待たせるつもり?」
白石清香から届いた離婚を催すメッセージを、今月に入って九十九回目に目にした時、とうとう我慢の限界が来た。神崎蓮のスマートフォンをつかみ、そのまま床へ叩きつける。画面には蜘蛛の巣のようなひびが広がった。
浴室から出てきた蓮は、床に散らばった破片を一度見ただけだった。怒るでもなく、私を責めるでもなく、壊れた端末を拾い上げてSIMカードを抜き、予備のスマートフォンに差し替える。そして清香に短い返事を送った。
「もうすぐだ」
それだけ済ませると、使い物にならなくなった端末をゴミ箱の横へ置いた。
蓮は知らなかった。その頃の私は、すでに進行胃がんを患っていた。
あの時はまだ、自分たちの結婚がどんな形で終わるのか知らなかった。
すべてはそこで終わったと思っていたのに、死んだ私の前に現れたのは、「人生再起動システム」と名乗る奇妙な存在だった。
そして、もう一度生きる機会を与えられた。
今度こそ、私は神崎蓮を選ばなかった。