あらすじ
記憶を失った二十歳の少女アンは、病院のベッドで目を覚ます。自分の名前も、過去も、そして大切な人たちのことさえ思い出せない。そんな彼女を待っていたのは、かつての知人だという青年ツキシロと、一人の青年キユウの死亡事件だった。
事件当日、アンはキユウと会っていた。しかし、その後の三時間だけが、彼女の記憶から完全に抜け落ちている。さらに現場にはアンの指紋が残され、彼女の筆跡による不可解なメッセージまで発見される。
「もしかして、私がキユウを殺したの?」
事件を追う中で、アンは自分の中に「メイ」と名乗る、もう一人の自分が存在することを知る。そして三年前、ツキシロの妹ユナが命を落とした事件にも、自分とキユウ、そしてメイが深く関わっていたことが明らかになっていく。
失われた記憶の先に待っていたのは、誰か一人の悪意ではなかった。
大切な人を守りたい――その願いから、それぞれが選んだ「間違った優しさ」
やがてアンは、自分自身の中にある恐怖や怒り、悲しみと向き合うことになる。
すべての真実を知ったとき、アンが最後に選ぶのは、過去を消すことでも、メイを否定することでもなかった。
「メイと生きていく」
忘れてしまった世界の中で、少女は初めて、本当の自分自身と向き合いながら未来へ歩き始める。