あらすじ

西暦二八〇年、洛陽。呉が降り、三つに割れていた国がひとつの地図に戻った年。 史官・陳寿は、目録にない一巻の書き付けを見つける。倭へ渡った魏の官人が、朝廷へ提出しないまま残した私記だった。 そこに、あるはずのない名があった。 姓は風、名は維。劉備、関羽、張飛と、涿県の桃園で義を結んだ四人目の弟。 蜀の官簿にも、魏の公文書にも、その名はない。 中平元年、一八四年。黄巾の乱が始まった春、幽州涿郡で四人の男が出会う。 草履を売る劉備。追われ者の関羽。酒と肉を商う張飛。そして十五歳の風維は、剣を取らなかった。 倉の数を数え、水の高さを測り、人の逃げ道を作る。斬るより先に、生き延びさせる。それが彼の戦い方だった。 やがて徐州が焼かれ、義兄弟は離散する。乱世に呑まれた末に彼が向かったのは、北でも西でもなく ― 東の海だった。 海の向こうには、まだ名を持たない国がある。倭。 三国志の裏側で、もうひとつの国が生まれる。 これは、正史から消えた男の物語である。

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カクヨム
カクヨム2026/09/06
  • 現在の作品四国志 ― 第四の名