あらすじ
高校一年生の少女・凛は、「将来の夢は何?」と聞かれることが苦手だった。
周囲の友達は、いい大学、いい仕事、恋愛、結婚など、それぞれの「幸せな未来」を当たり前のように思い描いている。
けれど凛には、どうしても疑問があった。
――みんなが幸せだと言っているものを、私は本当に幸せだと思うのだろうか。
ある夏、祖母の家を訪れた凛は、縁側で庭の花を眺めながら穏やかに過ごす祖母の姿を見る。
「それが幸せなの?」
凛が尋ねると、祖母は「今の私はね」と答える。
若い頃に幸せだと感じたことと、今幸せだと感じることは違う。
人によっても違う。
そして幸せは、誰かから教えてもらうものではなく、自分の気持ちを観察しながら見つけていくものなのだという。
その言葉をきっかけに、凛は「私の幸せを探すノート」を作る。
毎日の中で、
「嬉しかったこと」
「心地よかったこと」
「疲れたこと」
「嫌だったこと」
「またやりたいと思ったこと」
を書き残していく。
すると、少しずつ自分の輪郭が見えてくる。
大勢の人に認められることより、気の合う人と過ごすこと。
競争に勝つことより、自分のペースで成長すること。
忙しい毎日より、静かに過ごせる時間。
誰かが決めた「正しい人生」より、自分で選んだと思える人生。
凛は、自分が何を好きなのかだけではなく、何が自分を苦しくさせるのかを知ることも、幸せになるために大切なのだと気づいていく。
そして進路を決めるとき、凛は初めて「みんなが選ぶから」ではなく、「私はこういう毎日を送りたい」という基準で自分の未来を考える。
人生の答えがすべて見つかったわけではない。
これからも迷うだろう。
それでも凛は、自分に問い続けることにした。
――私は、何をすると心地いい?
――私は、何をすると苦しい?
――私は、本当にこれを幸せだと思っている?
幸せには、ひとつの正解があるわけではない。
誰かの幸せをそのまま自分の幸せにする必要もない。
日々の小さな「好き」と「嫌い」に耳を澄ませ、その一つひとつを手がかりにしながら、自分だけの幸せの形を見つけていけばいい。
凛はまだ、自分の人生の途中にいる。
けれどもう、誰かが決めた幸せを追いかけるのではなく、自分の感じたことを頼りに、自分の人生を選んでいくことを知っている。