あらすじ

主君を逃がすため、ただ一人、橋に残った侍がいた。 槍に貫かれようと。 矢に射られようと。 血を流し、膝が折れようと。 侍は、退かなかった。 「小童。背を見せるな」 主君の言葉を胸に、迫る敵を斬り続け――役目を果たした侍は、静かに目を閉じる。 次に目を覚ました場所は、魔法の存在する異世界だった。 見知らぬ国。 見知らぬ人々。 そして、見知らぬ理。 そこでは時に、多くを救うために少数を切り捨てることが正しいとされる。 侍には、それがわからない。 だから、目の前に救える命があれば手を伸ばす。 誰かが背を向けるなら、自分が前に立つ。 たとえ、一人でも。 「命は、また生えるのか」 幾人もの生き方とぶつかりながら、名もなき侍は歩いていく。 背に守るべきものがある限り――幾度でも侍は立つ。 やがて、人々は知ることになる。 侍とは、刀を持つ者の名ではない。 その生き様の名なのだと。 これは、一人の侍が異世界を変える物語ではない。 侍の背を見た人々が、自ら立ち上がっていく物語。 ――侍、異世界に立つ。

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カクヨム
カクヨム2026/09/06
  • 現在の作品名もなき侍、異世界に立つ