あらすじ
「証拠もないくせに、私を罪人扱いするのか、婚約者殿?」
卒業式典の大広間。王太子ライオネルから、身に覚えのない毒殺未遂の罪で婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢セシリア。男爵令嬢ミラの涙ながらの「証言」だけを根拠にした断罪劇に、彼女は静かにため息をついた。
――だって私、前世は日本の科捜研で法医鑑定官をしていたのですから。
証人は被害者本人のみ。物証なし。反対尋問もなし。そんな杜撰な茶番、通用するはずがありませんわ。
実はセシリアには、三ヶ月前から追い続けていた事件があった。この国で唯一自分に優しかった前王妃の、毒殺。「病死」と公表された遺体に、彼女は確かな毒物の兆候を見抜いていた。
証拠が揃うまで動くな――科捜研魂の囁きに従い、彼女は毒物サンプル、偽造された筆跡、矛盾する証言の時系列を密かに集めていた。そして最大の切り札は、公爵家に伝わる家宝『死者の記憶を宿す琥珀』。触れた者に死者の最期を追体験させる秘宝である。
「証拠鑑定を、させていただけますか?」
公開の場でこそ、証拠は一気に叩きつけてこそ効く。向こうが用意してくれた舞台の上で、令嬢鑑定師の逆転劇が幕を開ける。
そして事件の果てに待っていたのは、噂とはまるで違う、意外すぎる新たな出会いで――。
死者の声を聴く鑑定令嬢が贈る、痛快・証拠主義の断罪ミステリー、開幕。