あらすじ
【あらすじ】昭和二十七年、夏。GHQが撤退し、主権を回復した日本。しかし復興の光の影では、戦前派の保守権力や悪徳警官が再び息を吹き返す「逆コース」の濁流が渦巻いていた。隣国の戦火がもたらす特需の煤煙と、敗戦の虚無感に沈む「煙の都・大浪」。行き場のない浮浪児、戸籍のない戦後ゴミと蔑まれる若者・鉄(てつ)は、かつて地下道で仲間を虫ケラのように虐殺した大浪市警の視察官・大滝への復讐を誓う。鉄の前に現れたのは、冷徹な知性を持つ学生崩れの策士・宗像新一。「権力を殺すには、もっと巨大な『権力』がいる」新一の計画――それは、国も警察も信じられない底辺労働者たちの怒りをハッキングし、新宗教『報国救世会』という偽りの神話を創り上げることだった。技術参謀である頑固職人・源さんが削り出した「魔改造ツェンダップ・ソロ」の轟音とともに、鉄は神の着ぐるみを着た狂犬として裏社会の暴力を蹂躙していく。国家の持つ合法の暴力、裏社会の不法の暴力、そして信仰に踊らされる群衆の狂気。三つの怪物が互いの肉を食らう全面戦争の果てに、持たざる若者たちを待ち受ける「因果応報」の結末とは――。
【作品の魅力】
1950年代の大浪を舞台に、重厚で湿り気のあるゴシック調の文体で綴られるピカレスク・アクション。実在の重戦闘二輪(ツェンダップKS750)や名車メグロZ3が泥濘を裂く、泥臭くも耽美なダークヒーローたちの破滅譚。