あらすじ

「竜に名前を付けるだけの女を、王太子妃にはできない。竜に乗るのは妹だ」 婚約者の王太子フィルマンは、妹ニネットの手を取って、そう言った。 私はペリーヌ、二十四歳。王立竜舎の〈名付け師〉で、六年間、王国の軍竜十二頭すべてに名を付け、毎朝その名を呼んで空へ上げてきた。この大陸の竜は、自分に名を付けた者の声しか聞かない。名は一生に一つで、付け直せない。王太子は、それを竜舎のしきたりだと思っている。 「名前を呼ぶだけでしょう? 私にもできるわ、お姉さま」 「では、帝国へ行ってあちらで名前を付けます」 帝国からは六年で三通、名付け師を貸してほしいという願いが来ていて、王都が全部握り潰していた。その夜のうちに国境へ向かうと、帝国の竜騎士団長が待っていた。帝国の竜は毎朝同じ刻に南を向く、あなたの声を聞いているのだと思う、と彼は言った。 国境を越えた翌朝、六年の癖で一つ目の名を呼んだら、宿の窓の外に王国の軍竜が一頭、降りていた。 「戻れ。竜が一頭も飛ばないのだ」 「呼べば来ますわ。名前は、私が付けましたので」 王国の軍竜は、一頭ずつ、私の窓へ飛んでくる。菓子をねだりに来る黒髪の子供が、実は誰なのかも、私はまだ知らない。

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カクヨム
カクヨム2026/09/06
  • 現在の作品「竜に名前を付けるだけの女」と婚約破棄されましたので、帝国で名前を付けます ~王国の軍竜が一頭ずつ、私の窓へ飛んでくるのですが~