あらすじ
――鮭の稚魚、蜂の群れ、伝書鳩、紙飛行機。雲、雪。 AIの盲点を突く「超アナログ密輸」で国境を越えろ――
西暦2426年。
日本は東経138度線(鉄の分水嶺)を境に、冷酷に分断されていた。
西日本はAIと資本主義が極限まで進んだ経済の都。衣食住の貧困は消えたが、若者たちは「洗練された歩き方」や「人工香水」といった、無意味なマウンティング(虚飾のステータス)のスコアを競い合う精神の病に侵されていた。
一方、東日本は大国と結びついた軍事と医療の国。両者の間では、電子メール一通、写真一枚すら通信することが完全に遮断されている。
そんな狂った世界で、汗をかき、泥にまみれ、全力で走る男たちがいた。大手運送会社の本社に籍を置く、『佐川輸送―越境輸送部』。現場最高責任者の魚川鉄平は、常に激しい胃痛に苦しみ、AIや理不尽な上層部に怒鳴り散らしながらも、「人命尊重」の美学を胸に、草の根のネットワークを駆使して絶対不可能とされる荷物を運び続ける。
鮭の遺伝子に組み込まれた20年分の家族ビデオ。巨大カタパルトで射出される、亡き母の匂いが残る純白のシーツ。生きた蜂の脳に書き込まれた、命懸けの告発データ――。競合他社『飛脚便』の冷徹なエリート・高市零が、人工台風や地殻変動を操って立ち塞がる中、鉄平の「勝負時の勘」と、氷のように冷静な総務の美女・白石薫の支えを武器に、越境輸送部のトラックが国境の防壁をブチ抜く!
生存難易度ゼロのディストピアで、「生身の人間」として生きる誇りを取り戻す、痛快&哀愁の近未来ロジスティクス・サスペンス、ここに開幕!