あらすじ
「母の葬式を覚えている人を、インターネットで探したことがある。母が死んだ証拠を、母に見せるためだった」
実家の片づけ中、透は幼い頃に飲んだジュースの名前が、記憶と違うことに気づく。匿名掲示板で同じ記憶を持つ人を見つけた翌日、七年前に亡くした母が台所に立っていた。
母の死を覚えているのは、透と妹の千尋だけ。写真も留守番電話も、母が生きていた過去へと変わっていく。助けを求めた先で届いたのは、見知らぬ家にいる、同じ母の写真だった。
「昔からこうだったでしょう」
その一言にうなずくたび、知らないはずの思い出が懐かしくなる。母が帰ってきた家で、兄妹の記憶が離れていく。