あらすじ
死ぬ間際、老棋士・岩城宗一九段が思ったのは、
――もう一局、打ちたかったのう。
ただ、それだけだった。
七十年近く碁を打ち続け、それでも大きなタイトルには届かなかった男。
どんなに苦しい碁でも投げない。その代わり、助けられそうな石をどうしても見捨てられない。
そんな不器用な棋士人生を終えた――はずだった。
十年後。
小学五年生の少女・桜井小春は、高熱をきっかけに前世の記憶を思い出す。
自分がかつて、あの老棋士だったことを。
けれど今の身体は、十歳の女の子。
小さな手。足りない体力。続かない集中力。
それでも偶然見つけた子ども囲碁教室で碁石を手にした瞬間、小春の気持ちは決まった。
――やっぱり、碁が打ちたい。
囲碁が大好きな少女・水瀬ひなた。
勝つために、迷わず石を捨てる少女・黒川凛。
新しい友達とライバルに囲まれて、小春の日常はまた碁で埋まっていく。
前世では直せなかった弱さを、十歳の手でもう一度。
七十年打っても、まだ足りない。
二つの人生を抱えた少女が、碁盤の前に戻ってくる物語。