あらすじ

俺は今、家に帰っている。 ただ、それだけだ。 問題は、帰り道が分からないこと。 まあ、歩いてればそのうち着くだろ。たぶん。 この世界には、エルフもドワーフもドラゴンもいる。天使も悪魔も神様もいる。 勇者が魔王を倒しに行って、国と国が戦争して、世界を救う英雄が生まれる。 そういう世界を、俺は今日も歩いている。 腹が減れば飯を食う。 金が尽きれば働く。 疲れたら宿を探す。そして、また歩く。 途中で、たまに誰かとすれ違う。 まだ勇者じゃない青年。 まだ聖女じゃない少女。 まだ名もない魔法使い。 まだ何者でもない、ただの人間。 荷物が重いから、道具をくれてやる。 読めないから、拾った本を捨てる。 面倒だから、仲間になるのは断る。 それで終わりだと思っている。 けど何日か経って別の街に着くと、酒場でこんな話を聞く。 「最近、魔王討伐に出た勇者がいるらしいぞ」 「へえ」 「すごい魔法使いも仲間にいるんだと」 「……ああ」 「知ってるのか?」 「この前その魔法使いの姉ちゃんに、酔って絡んじまってさ」 「お前かよ」 「連れの青年に止められた」 「それで?」 「あいつら、そのままつるんでるんか」 俺がちょっとだけ関わった誰かが、いつの間にか英雄になっている。 けれど、俺は何も変わらない。 そして今日も。 「やべ、また路銀なくなった」

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/09/06
  • 現在の作品俺の帰り道では、いつも誰かの物語が始まっている