あらすじ
グランヴィル公爵ルシアンは、人の顔を見ない。
冷酷で傲慢だと噂される彼には、他人の強い「望み」が異形の怪物として重なって見えていた。善人か悪人かも、何を望んでいるのかも分からない。ただ、人が多いほど彼の視界は苦痛になる。
そんな彼が、縁談でエレノア・フェルナーだけをまっすぐ見つめた。
「あなたは、人間に見える」
何も望まないように生きてきたエレノアだけは、彼の目に普通の人間として映る。
ルシアンが求婚した理由は恋ではない。彼女だけが「安全に見える」からだ。
別室、別財産、私信の自由、伯母との往来、身体的接触は別同意。
奇妙な条件婚を選んだエレノアは、公爵家で少しずつ自分の好みを取り戻していく。
黒すぐりのジャムが好き。
菫の香りは苦手。
使われていない温室を、自分の場所にしたい。
そして――ルシアンにも、そこへ来てほしい。
望みを持つほど、彼女は彼の目に怪物へ変わっていく。
「人間に見えるから」始まった婚姻は、恋をした瞬間に成立条件を失った。
欲を消して安全な妻へ戻るのか。
それとも、怪物に見える今の自分のまま、相手を望むのか。
“見た目”ではなく、現在の相手を知り続けるための条件婚ロマンス。