あらすじ
人は、忘れたからといって、本当に失ったわけではない。
――そう信じている。
近未来。
脳に接続されたその装置によって、人は自らの記憶を“もう一度体験する”ことができるようになった。
そんな時代に生まれたのが、「回想士」という仕事だった。
回想士は、依頼人とともにその人の記憶へ入り込み、失われた思い出を探し出す。
「昨日、家の鍵をどこに置いたか思い出せない」
「亡くなった父が、最後になんと言ったのか知りたい」
「昔、大切な人と何か約束したはずなのに、それだけが思い出せない」
依頼は、どれも些細なものに見えた。
けれど、人の記憶は不思議だ。
楽しかった一日が数分で過ぎ去ることもあれば、
たった一言のために、何年も前の時間が永遠のように続くこともある。
そして――
忘れられた記憶の奥には、ときどき「本来そこにあるはずのないもの」が存在する。
回想士として働く主人公は、いくつもの依頼をこなすうちに、ある奇妙な事実に気づき始める。
別々の人間の記憶の中に、
なぜか自分自身が存在しているのだ。
それは、主人公がまだ生まれていないはずの過去にも――。
忘れたものを探す仕事が、
やがて自分自身の失われた記憶を辿る旅へと変わっていく。
これは、
誰かの「忘れもの」を探す物語。
そして――
最後には、きっと自分自身の忘れものを探す物語になる。