あらすじ
――この世に幸福があるとすれば、それは〝この世に生まれ落ちないこと〟。
そう断じる少女・橋口巳凰は、笑い方も知らず、孤独に生きていた。
クラスメイトたちには「透明人間」と揶揄され、かつての友人たちには「つまらない」と突き放され、心に傷を抱えたまま、他人と距離を置いて暮らしている。
そんな彼女が出会ったのは、クラスメイトの強面ヤンキー・柳 惟路葉。
正反対の二人を繋いだのは、謎めいた白い綿毛の生き物「たんぽぽ」だった。
惟路葉はある日、巳凰に「友達は友達を見捨てない」と優しく語りかけ、その言葉が巳凰の内面に静かな変化をもたらす。
やがて惟路葉は巳凰の家を訪れ、穏やかな時間を過ごす中でそっと唇を重ねる。
これをきっかけに、巳凰は惟路葉に特別な感情を抱き始め、二人は初めてのデートを経験する。
突然の雨に見舞われ、惟路葉の家に泊まることになった夜。巳凰は、自分以外にも「透明人間」がいたことに気づく。
そう、目の前の惟路葉もまた、同じように孤独を抱えた「透明人間」だったのだ。
互いの孤独に惹かれ合い、心から求め合った二人はその日に恋人となる。
「死にたい」と繰り返していた巳凰の呪詛のような言葉は、次第に「生きたい」へと変わっていく。
だが、彼女がようやく手にしかけた小さな幸せとは裏腹に、やがて残酷な現実が二人を待ち受けていた。
そして――たんぽぽの正体が明かされたとき、この物語は〝本当の始まり〟を迎える。